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研究開発におけるDX MI

2022-02-21

素材開発をとりまく環境が厳しく変化し続けている中、マテリアルズインフォマティクス(MI)に注目が集まっています。しかし、MIは何でもすぐに解決できる万能な手段ではなく、上手く活用するためには組織・体制・仕組み構築など、戦略を持って取り組むことが重要です。

この記事では、研究開発においてデジタル技術の活用(DX)やMIを実現するために重要な論点を解説します。

素材開発をとりまく厳しい環境変化

主要国における企業部門の研究開発費を比較すると、中国は2000年以降急激に増加しており、米国や欧州各国も2010年以降急激に増加しています。一方で、日本の研究開発費の増加は緩やかであり、2018年には米中の3分の1程度と低迷している状況です。

一方で、素材開発に対してはニーズの多様化や複雑化、製品サイクルの短期化による開発サイクルの短期化により難易度が上がり続けています。研究者が参照すべき論文の数は指数関数的に増加し、複雑で多様化するニーズの発生により、開発現場では従来の開発手法で解決できない課題が多く存在しています。

また、効率的な開発を妨げる要因として、保守的な開発テーマ選定や素材開発における知見の属人化による得意不得意、また過去の開発経緯が残されていないことによる繰り返しなどは、珍しいことではありません。

このような厳しい開発環境の中でも、化学業界は2009年から2018年の間で研究開発費が横這いで、競合となる他国の化学業界との研究開発費の差は大きくなっていく一方です。この状況を打開するために、開発手法の革新を行い、生産性を大きく向上させる必要性があります。

素材開発を革新するMIとDX

近年、機械学習やディープラーニングなどの研究が活発になり、それらを材料開発に適用したMIが注目されています。素材開発を行う場合には、機械学習モデルによる物性予測等のMIに目が行きがちですが、まず研究開発プロセス全体を眺めたうえで、自社の研究開発をどのようにデジタル技術で効率化・革新化していくのか、全体像を考えることが重要です。

素材開発におけるシミュレーションの活用や機械学習による物性、構造の予測などは、DXの中でも一般的にMIに分類される領域です。このように、研究開発のDXにおいて、MIは重要な要素の一つであることが分かります。

実際に、組織的にMIを実行するためには自社データの整備が進んでいる必要があります。素材の研究開発における自社データの整備の例としては、テーマ選定において論文情報を整理する際の自然言語処理や共有性を高めるための電子実験ノート、情報を共有・蓄積するためのデータベース構築などが挙げられます。

素材開発の効率化・革新化を実現するためには、まずR&Dプロセスの全体像を書きだした上で、課題がどこにあるのか分析していくことが必要です。各プロセスにおいて、どのようなデジタル化手段があるのか、それにより効率化が可能なのかを検証することで、どのテーマから取り組むべきかといった優先順位を明確にできます。

万能なイメージのあるDXやMIですが、一朝一夕ですぐに効果を出すことはできません。社内で今までとプロセスを変更するための啓蒙を行ったり、トライ&エラーで上手くいく方法を探したりと数年がかりで取り組めるプロジェクトとなるでしょう。

デジタルR&Dを形作るために抑えるべき3つの論点

デジタル技術を活用した研究開発プロセスである「デジタルR&D」を形作るまでには、さまざまな社内の混乱や衝突を乗り越えていく必要があります。

デジタルR&Dを推進するには、「ビジョン構築浸透」「プロジェクト実行」「仕組み構築」の3つの論点を抑える必要があります。それぞれ、具体的にどのような取り組みを行っていく必要があるのか紹介します。

1.ビジョンの構築と浸透

はじめに、「ビジョンの構築と浸透」に取り組む必要があります。推進していけるパワーを持った強いリーダーのもとで、メッセージを発する経営層と連携しながらビジョンを作成し、それを全社に浸透させていきます。

デジタルR&Dの実現のためには経営戦略の方向性とデジタル戦略の方向性は合致させながら自社独自のデジタル戦略(=ビジョン)を描いていく必要があります。時にはそもそもの技術戦略の見直し(ポートフォリオ戦略やオープンイノベーション等)など根本的な議論になるケースも多くあります。

また、ビジョンを作成する際には、DXやMIを用いて何を実現していくのかを明確に示すことが重要です。また、それをどのような優先順位でどのくらいの期間かけて進めていくかのロードマップを示すことで、経営層の納得も得られ、社内の関係者もイメージしやすくなります。

実際に社内にビジョンを浸透させていく際のインナーマーケティングでは、各事業部や研究開発部門に対して、地道に説得して回る必要があります。実際にDXやMIを行う上では開発現場の協力がないと立ちいきません。研究現場で上手く浸透させてくれる協力者を見つけることも重要なポイントです。

2.プロジェクトの実行

実際にプロジェクトを実行していく際には、各事業部と連携しながら取り組むべきDX/MIのテーマを抽出することが重要です。研究テーマ設定やそれに必要なデータ整備、予測する際のモデル構築、結果の検証と評価のステップが必要ですが、実際に実行していく場合にはこれらのステップを行ったり来たりしながら結果に繋げていきます。

MIを実行する研究テーマを設定する際に考慮すべき観点は、質と量の観点で必要なデータは存在するか、自社のビジョンと照らし合わせた上で重要な項目か、また実行する人をアサインできるのかという点で、その観点をもとに各テーマの評価を行います。

また、研究テーマの種類によって集められるデータの量や質が異なります。例えば、配合系であれば実験を短期間で回すことでデータは収集しやすいですが、合成系には時間がかかる、などです。データを整理する場合には、この違いを考慮した上でデータ不足などへの対応を検討しておくことが重要です。

モデル作成と検証評価のステップでは、取り組む研究テーマに関するドメイン知識に基づいて特長量の選択をすることが重要です。また、結果に対しても、ドメイン知識と照らし合わせながら結果を解釈することで、成果に繋げやすくなります。

3.仕組み構築

最後に、DXやMIを組織として定着させていくためには、組織全体で実行できるような仕組みを構築する必要があります。特に外部からの協力を得て取り組んでいた場合などは、自社で継続的に実行できるような仕組みも検討することが重要です。

DXやMIを推進するチームの体制としては、推進組織を社長などの直轄組織とするトップダウン系と、研究開発を行う事業部に配置するボトムアップ系に分類できます。トップダウン系としては、中期的な仕組み作りのための投資が可能になりますが、研究現場との距離があるため、研究現場との密な協調が鍵になります。事業部下の研究開発部主体で行う場合は、現場感を持ったスピーディーな動きをとることができますが、短期的なROIの判断が入り適切な投資が行いづらい、というような特徴があります。

推進チームには、リーダーに加えて、研究開発部隊との関係を上手く調整する橋渡し役と、データサイエンティストとITアーキテクチャが必要です。それぞれのスキルを持った人材の長期的な育成や、外部からの獲得など人材戦略が重要です。この中では研究とデータサイエンスの橋渡しをする役割が非常に重要です。それには自社の研究開発の勘所を理解しており、MIに対する基本的な知識を持ち、現場の研究者とデータサイエンティストとの橋渡しをするコミュニケーション力も必要になります。

また、将来的には素材開発を行う研究者自身が、データサイエンティストに依存せずに自身でMIの実行や検証が行えるような仕組みを構築し、スピード感を持った開発が実現していくことが望ましいです。

それを実現していくためには、自社内製化だけにこだわらず、外部のツール・リソースを活用していくことが重要になります。自社だけでこれらを完結させるのが難しい場合には、長期目線で育成を進めながら短・中期的には外部サービスを上手く活用することが重要です。

まとめ

製品の高品質化や開発サイクルの短期化により、素材開発の環境は年々厳しく変化し続けています。従来は一部の優秀な研究員が持つ経験や勘、センスに頼った開発が一般的でしたが、それが通用しなくなっています。

解決策としてDXやMIに注目が集まっていますが、一朝一夕に上手く行くわけではなく、仕組みの構築には3~5年の間、取り組み続けることが重要です。ビジョン構築・浸透、プロジェクトの実行、仕組み構築の3つの論点を抑えることで、デジタルR&D構築の成功確率を高められます。

今後の研究開発では、強いリーダーシップを持った人材と質のいい豊富なデータ、DX活用することを前提とした課題設定力、ツールやリソースなどの拡充に加えて、人材の育成が成功するための要素となるでしょう。

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