高機能を有する新しい色素構造を短期間で発見
株式会社林原 機能性色素部 土家裕大・矢野賢太郎
Q1: MI を導入する以前に抱えていた課題・問題点を教えてください。
新しい色素の設計は、研究者の経験が大きな要素を占めています。
私が所属する機能性色素部では、 新しい色素の設計を「過去開発した色素」や「書籍・特許等の公共情報」を参考にして開発しているため、 開発者自身の発想のみでは限られた範囲でのアイデアにとどまってしまう傾向がありました。
構造式と明らかな物理的、 化学的な相関が見出せていないパラメータについては、 新たな色素設計のために利用する事が困難で、 開発者の個人的な経験や勘といった過去の知見を中心とした開発手法に限界を感じていました。
色素開発において、ある性能を色素に付与しようとする際、 十分な知見が無い場合、目的の性質と関連する可能性のあるパラメータの検討を網羅的に行う必要があり、 非常に手間と時間がかかります。
Q2:実際に導入してどのように改善・解決しましたか?
新しい構造式を短期間で生成する事が出来ました。
アナリティクスシステムを導入することで、 所望の物性値を持つ色素を 1 日で導き出すことが出来ました。 本来数日かけて研究者が行う作業をアナリティクスシステムが代わりに行うことで、作業時間が大幅に短縮しました。
分子の構造式をアナリティクスシステムが独自のアルゴリズムで部分構造に分解し計算することで、 新しい相関関係をいくつも見つける事が出来ました。 また、その分解した部分構造を組み立てることにより新しい構造式を生成する事が出来ました。
図 1 新しい色素構造生成の一例 1)
Q3:アナリティクスシステムを使用した実感、印象をそれぞれお聞かせください。
ユーザーフレンドリーな GUI がユーザーをサポートしてくれます。
GUI のプロトタイプは非常にシンプルに作られており、 Jupyter Notebook や python の使用経験が少なくても問題無く使用出来る事が魅力の一つです。
本来は、実験の手を止めてアイデアを考えるところを、 実験を行いながらシステムがアイデアを出してくれるので、 作業効率が大幅に改善されました。
Q4:アナリティクスシステムの課題があれば教えてください。
入力するデータの質が高い、量が多い程、 構造式と物性の間のより高い相関関係を見つけられる確率が上がってきます。 したがって、質の高いデータをより多く収集する必要があります。
色素設計だけでなく、製造プロセスにおける品質のぶれの原因も、 アナリティクスシステムで予測出来れば品質改善に貢献できる素晴らしいシステムになると思います。
参考文献
- ^ Takeda et. Al., Molecular inverse-design platform for material industries, arXiv:2004.11521,(2020).